旅先の知らない飲み屋で酒を飲むのが好きなんだが、今年は全然そういうことできなかった。そのフラストレーションからか、漫画の酒飲んでるシーンがすごく輝いて見えてね。今年読んだ漫画の中で、特に気に入ってる飲酒シーンを記録しておこうと思う。
永田カビ『現実逃避してたらボロボロになった話』のご近所飲み歩きシーン
現実逃避のための飲みすぎでアルコール性急性膵炎になった著者が、入院生活の中で創作意欲を取り戻していくまでを綴ったエッセイマンガ。
上のあらすじを読んでわかる通り、ここで描かれる飲酒は決してマネしてはいけないタイプのものである。しかし第一話に出てくる近所の飲み屋の魅力が垂涎物なのだ。
14時OPENの「笑顔のすてきな店員さんの作る濃い水割りがでてくるくんせい屋さん」って何それ、絶対通ってしまうやろ・・・!!!
他にもさらっと描写される「豆腐サラダとハイボール」とか「焼きエビ」が何故かむちゃくちゃ旨そうに見えたりと、5ページくらいの飲酒シーンがすごく輝いている。
結局筆者は退院してもドクターストップでお酒が飲めなくなってしまうんだけど、この描写を見ていると、メンヘラアラサーと自称する著者は、酒がもたらす酩酊よりも、酒の場が作り出すワクワク感が好きだったんじゃないかなあ。結局追いつめられて家でコスパを求めた宅飲みにスライドして、体を壊してしまうんだけど・・・。
筆者が酒とは別にワクワクを提供してくれる飲食物を見つけたら、それを題材にしたグルメエッセイを描いて欲しいな。
をのひなお『明日、私は誰かのカノジョ』5巻の馴染みのバーで飲んでるシーン
5巻から始まるエピソードの主人公の萌ちゃんは、バイトしつつ奨学金で大学に通うしっかり者だ。ファッションも生活も自分のスタイルが決まってるし、サークル仲間とセックスしてみたりと充実して見えるが、「自分は主人公ではなくモブだ」と考えて、何となくモヤモヤしたものを抱えている。そんな彼女がひょんな事からホストにドはまりしてしまい、あれよあれよという間に・・・・というお話なんだが、萌ちゃんがホストに狂う前、行きつけのバーで飲んでるシーンがとても良くて、結局コミックも買ってしまった。
内装はちょっとチープな感じだし、酒もつまみも種類はたくさんなさそう。でもマスター(ママ?)が感じよくて、居心地よさそうなんだよね。店員さんや他のお客さんと、ふとしたきっかけで話が弾むカウンター席のムードってプライスレスだよなー。2020年、飲み屋で知らん人と話す自由を我々は失ってしまったから余計にこの酒のシーンが輝いて見えるのよ。
美やお金や恋愛への女子の欲望を肯定的に描いた作品って、おそらくどの年代にもあると思う。私が10代の時は、何だろう。安野モヨコとか桜井亜美とか・・・???
『明日、私は誰かのカノジョ』は女子の欲望を描く作品の、ほんとに最新版だ。2020年代の空気感がいいし、登場人物の服や持ち物、お店なんかの描写のディティールが細かくて入り込んで読んでしまう。萌ちゃんどうなっちゃうのかなー、幸せになってくれー。もう母親目線で見てしまうわ。多分萌ちゃんよりそのお母さんのほうが歳近いし。
わたし、いつまで頑張ればいいの?
— サイコミ (@cycomi) 2020年9月18日
約束を破った担当ホストと
仲直りのために…
▼最新話が基本無料で読めるのはサイコミだけ!▼https://t.co/CXn1GGKoAP pic.twitter.com/ae9V0ADMmF
この漫画、本当に舞台が2020年で、コロナで大学が休みになったり、みんなマスクしてたりするのだ。このホストがマスクでシャンパンコールしてくるシーンのインパクトにやられて読み始めた。
藤本タツキ『チェンソーマン』3巻の新人歓迎会のシーン
『チェンソーマン』、友人に勧められて読み始めたのだが、ほんといい。こういう、何気ない日常パートのシズル感がたまらない。
公安のデビルハンターというファンタジーすぎる職業の面々の飲み会だが、そうそう、安居酒屋でやる職場の飲み会ってこうだよな~~!!という地に足の描いたリアル感。
食べたいもの、飲みたいものを口々に叫んでさ、グラスが溜まってきたら片付けてもらってさ、芋焼酎飲み始める奴がいてさ・・・。お座敷に座布団、メニューはパウチ加工してあって穴をあけて、輪っかで束ねてあるのよね・・・。机の上で箸袋がふにゃふにゃになってて・・・。そうそうそう。
仕事の酒が全部楽しいものとは言えないし、飲みにケーションなるものは淘汰されるだろうと思っているけど、こういう職場の飲みの場を、私は確かに愛していた。失って初めて気づいたよ。最後に職場の飲み会してから、もうすぐ1年とかになっちゃうよ・・・。
『チェンソーマン』、ほんとに面白い。無理に引き延ばしてグダグダになる事を恐れていたら、もう完結するみたいね。最近のジャンプはちゃんとストーリーに合わせて話が終わるんだね。いいことだ。
来年もほどほどに楽しくお酒を飲みましょう。