ネチのブログ

更新頻度は年一くらい

さよなら、津田沼パルコ

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ジーパン
怖い顔のプリントされたTシャツ
内臓飛び散らしたみたいな謎ペイズリーのシャツ
スニーカー
ミャンマーの民族衣装 数セット
リクルートスーツ

 

これだけ持って、オフィスカジュアルの会社に入社するために上京したのは、貧乏学生生活をやっと終えた23歳の春であった。

貧乏学生がサラリーマンになって突然豊かになるはずもなく、通勤定期の立て替えに背筋が凍るような財布事情の中、会社員生活の幕開けは、着られる服が足りない事に悩む日々の始まりでもあった。

 

上京したと浮き足立つ余裕はなく、会社と千葉の単身者用アパートを往復するのがやっとの生活。

 

そんな私に、ギリギリ届きそうな夢を見せてくれたのが、住まいの数駅先の津田沼パルコだった

 

無印良品natural beauty basicのセール品を少しずつ買い足して、何とか5営業日×2シーズン、困らずに過ごせる服を徐々に揃えた。
2シーズンというのは夏と冬だ。貧乏人には春服と秋服は贅沢品なのだ。

 

結局、東京に通勤を始めてから単身赴任が始まるまでの十数年、千葉のあの辺りに転々と住み続けたので、社会人の私の生活史は、津田沼パルコと分かち難く結び付く事となった。

 

例年期末に取引先を訪ねる全国出張が入るのだが、ワンシーズンごとにスーツのサイズが上がるので、毎年冬ボーナスを使ってオリヒカでスーツを新調するのが恒例になったこと。しかし年に数回しか着ない服とケチって売れ残りのセール品から選ぶために、クセの強いスーツばかり着るハメになったこと。

第三舞台の封印解除&解散公演のチケットを買うために開店前からチケットぴあに並んだものの、爆速でソールドアウトして目を剥いたこと。

結婚式に招待される事が増え、ドレスセット一式を買ったあと、それに似合うメイクをオルビスで施してもらったら、彼氏に絶賛されて嬉しかったこと。

気に入った定価の靴を二足衝動買いして、紙袋を手渡すダイアナの店員さんに見送られた時、かつて自分が思い描いていた人並みの豊かな生活を手に入れたと気が付いたこと。

同棲を始めた彼氏と津田沼の安居酒屋で昼酒した後に無印良品に行って、こんなソファが欲しいねえ、と微笑みあったこと。

北野エースで買った2本1980円のワインとビラーニグルメセットを通勤カバンに突っ込んで、夫がご馳走をこさえて待つ家に帰るのが、金曜日の定番になったこと。

『梨泰院クラス』にハマってジャンモにチャミスルを買いに行ったこと。

....
どこまで時を遡れば、津田沼パルコが閉館する未来を止められるのだろう、と、最近よく考えるのだ。

もしかしたら...貧乏でケチな新米会社員に、手に届く夢を見せてくれていた時、すでに津田沼パルコは圧倒的な煌めきを少しずつ失っていたのかもしれない。

庶民が想像も付かない豊かさ、イマジネーション、粋、そう言ったものを、少しずつ削ぎ落として、だんだん普通の商業施設になってしまった結果の、今なのではないか。

思えば私が初めて津田沼パルコを訪れたのは、ミニシアターが無くなってすぐの頃だった。

 

津田沼パルコで「選択できる」ようになることを通じて、自分が社会人として安定していく実感を覚えたが、

「小さくまとまるな」と、本当は喝を入れてもらいたかった。

 

それでも...上京して右も左もわからなかった私の、時にお姉さんとして、友だちとして、パートナーとして、いつもそこに居てくれた津田沼パルコ。

寂しいよ...。

 

津田沼は、パルコを失ってどうなってしまうんだろう。
人は増え、それなりに便利だけど、一つの時代が終わるんだな。

ありがとう。
さようなら。
津田沼パルコ。